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「美容×ピアサポート」で実現する“健康美” スタートアップとの共創成果をBAK DAYで報告

2022.04.20

神奈川県が運営する「ビジネスアクセラレーターかながわ(BAK)」は、県内に拠点を持つ大企業・中堅企業と、質の高いスタートアップ企業による事業連携プロジェクトの創出や、オープンイノベーションに向けたコミュニティ形成支援の取り組みを行っている。BAKが2021年6月に始動した「BAK NEW NORMAL PROJECT 2021」は、スタートアップと 神奈川県に事業所を持つ企業が新型コロナにより生じた社会課題を解決するインキュベーションプログラムだ。
資生堂研究所のオープンイノベーションプログラム「fibona」も参加した同プログラムでは、2021年8月に採択。リモート体験農園サービス、新しいスポーツ観戦の提案、初心者でも車の運転を楽しめるZ世代応援サービスなど、全16社による8つの共創プロジェクトで実証実験が進められてきた。

2022年2月25日に、これら8つの共創成果を一挙に発表するイベント「BAK Meetup Fes~BAK DAY~」がオンラインで開催された。

今回のプロジェクトにおいて、fibonaは習慣化アプリ「みんチャレ」を運営するエーテンラボ株式会社とタッグを組み、「美容行為✕ピアサポートによる自分らしい“健康美”の実現」をテーマに実証実験を実施した。

※ピアサポート:同じ境遇の仲間同士が交流を続けながら、助け合うこと



本イベントでは、約半年間に及ぶ取り組みの一次結果について発表した。オンラインにもかかわらず、各社からの工夫や熱意のあふれるプレゼンが繰り広げられ、質疑も盛り上がった当日の様子をレポートする。

コロナ禍に実施したスタートアップとの実証実験


BAK Meetup Fesの第1部では、今回のプロジェクトにおける実証実験の成果について、各社からユニークな報告がなされた。

我々のプロジェクトを代表してプレゼンしたのはfibonaメンバーの大南武尊。
「私たち資生堂は、皮膚科学、マテリアルサイエンス、感性研究などを通じて、肌の内側と外側、両方から美しさを引き出すことで、心身のウェルネス、つまり自分らしい健康美の実現、という価値創出に挑戦しています」

オンラインで開催されたBAK Meetup Fes。fibonaメンバーの大南がプレゼンを担当した。

コロナ禍によって、生活スタイルは大きく変化し、それに伴う心身の不調を感じている人、孤立感を抱くようになった人が増えた。

「肌も、気持ちも、行動も変わっていく不安定な状況下で、どのように心身のウェルネス、その人らしい健康美を実現・提供できるのかをディスカッションしていきたい。そんな思いからエーテンラボさまと共創させていただくことになりました」と、今回の共創が実現した背景を語り、プレゼンテーションをスタートした。

健康美とは何か?

社会環境が大きくゆらぎ、変化する時代が到来しているからこそ、「自分にフィットする美を目指していく」ことが健康美である、と大南は定義する。

美にまつわる行動やライフスタイルを長年研究してきた資生堂と、ピアサポートのノウハウに精通したエーテンラボ。2社がタッグを組むことによって実現した今回の実証実験では、両社のメンバーの予想を超える成果が出ていた。

実証実験の結果、参加者の約8割でストレス低下


今回は、エーテンラボの「みんチャレ」を通じてつながった人たちが5人1組のチームとなり、ピアサポートを通じて自分らしい健康美を獲得し、不安を低減できるか、という点に着目した実証実験を行った。

2021年秋から準備を進め、2022年1~2月にかけて実験を実施。ちょうどこの時期は国内でオミクロン株が猛威を振るい、新型コロナウイルスの感染者が急増し、多くの人々が自粛を迫られた期間と重なった。

果たして、どのような結果をもたらしたのか。大南は、「データの解析はまだ十分ではありませんが」と前置きした上で、結果を次のように述べた。

「感染者数が急増している中、一定期間、美容✕ピアサポートを使った参加者の約8割に、ストレス値の低下が見られました。」

さらに、ピアサポートを通じて美容行為にポジティブに向き合えるようになった結果、その後の日常にも行動変容が見られたという。
「みんチャレを通じたピアサポートは、言い換えればピアプレッシャーと捉えることもできます。同じ目的の仲間と繋がっているからこそ、裏切ることはできない。そうした心理的要素がプラスに働いた側面も大いにあると考えられます」

また、今回の試みをきっかけとして、実験後も「自分らしいピアサポート」に向き合うことを意識するようになった参加者も多いそうだ。
「例えば、実験によってAさんは食生活を意識するようになり、野菜料理の写真をたくさんアップするように。Bさんはストレッチなど運動頻度を増やすように、Cさんは化粧品の写真をアップするように…など、今までやりたいと思っていたけど、なかなかできなかったことに新たに挑戦されたのです」と、具体例を挙げながら説明。

「ストレスの低減と、新しいことへの挑戦。この2点が実証実験から見えてきた成果です。すべてのデータの解析が終わり次第、学会発表や社内提案などを経て出口を考案していきます」と今後への抱負も述べた。

プレゼン後の質疑応答では、
「途中で脱落した人はいたのか?」
「年齢差や居住地の差がありそうな兆候は見えているか?」
「健康美のために具体的にどのような行動が取られたのか?」
など、参加者たちから率直な質問が多数寄せられ、今回の実証実験への高い関心がうかがえた。

危機の時代だから生まれる新たなイノベーション


さらに第2部のCommunity Sessionでは、これからのイノベーションの種を探ることを目的に、今回のプロジェクトに参加した大企業・中堅企業が掲げるテーマについて、少人数でのディスカッションが行われた。
資生堂ルームでは、エーテンラボ、資生堂のメンバーに加え、イベント参加者の中から興味を持ったメンバーが集まった。ヘルスケアコミュニケーションに関心を持つ人や広告業界の関係者など、多種多様なバックグラウンドを持つ参加者が、新たなアイデアの芽や着眼点のヒントになるような議論をくり広げた。

長引くコロナ禍だが、危機の時代は新しいものが生まれる好機でもある。リーマンショックを契機にAirbnbやUberが躍進を遂げたように、変化の時代だからこそ誕生するイノベーションがあるはずだ。これからもfibonaの挑戦は続いていく。



(text: Hanae Abe edit: Kaori Sasagawa / Emi Kawasaki)

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ビューティーテック業界を中心とするスタートアップ企業との共創を目指したアクセラレーションプログラムです。

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