Activity

プロとプロじゃないと成功しない。資生堂fibonaイベントで語られた、オープンイノベーション成功の秘訣

2019.07.26

この記事は合同会社pilot boatより許可を得て転載しており、元記事はこちらとなります。

2019年7月1日資生堂R&Dは、オープンイノベーションプログラム「fibona(フィボナ)」の開始を発表した。同日から2019年8月29日に行われる社内ピッチ会(fibona Pitch Stage)への参加企業を募集している。

fibonaを発表したイベントでは、スタートアップを招いたパネルディスカッションが開催された。本記事ではダイジェストで、ディスカッションの様子をお伝えする。なお、内容はpilot boatで編集を加えている。

ディスカッションに登場した登壇者は次の通り(上写真の左から。敬称略(以下同様))。
株式会社 LOAD&ROAD / teplo 河野辺和典
トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社 / DFree 中西敦士
株式会社 no new folk studio / ORPHE TRACK 菊川裕也
株式会社コードミー / CODE Meee ONE 太田賢司
株式会社資生堂 インキュベーションセンター 大南 武尊
株式会社 HEART CATCH 代表取締役 西村 真里子(モデレータ)

お茶、排泄、靴、香り。各IoTスタートアップの取り組み

西村:
早速ですが、川野辺さんからどのような事業をやっていらっしゃるか、お話を伺えますか。

川野辺(teplo):
よろしくお願いします。LOAD&ROADの河野辺と申します。僕らはお茶のIoT「teplo(テプロ)」を作っています。

私たちが飲んでいる煎茶は1750年頃に確立されました。ただ茶器を見てみると、当時からずっと変わっていない。これを現代版に変えたらどうなるか、という事業を運営しています。

川野辺(teplo):
我々が重要視しているのはデータ解析で、お茶を入れる前に指を添えて脈拍数を測ったり、指の温度を計測しています。
その最中に環境の室温、湿度、騒音レベル、暗さなどを解析し、お茶の抽出に反映。お茶を飲んだ後にユーザーがフィードバックし、どんな環境でどんな人がお茶を飲んだらどういうふうに感じるかを解析しています。
今までどんな方に売れていたかはわかっていたけれど、どう飲まれて、どういう感想をもったかはわかりませんでした。私たちはデータ解析によって、こういったことを可視化していこうと考えています。まだ研究中ではあるのですが例えば、脈拍数・抽出時間・温度・年齢と性別に関連性がありそう、などというデータが集まっています。

西村:
川野辺さん、ありがとうございます。トリプル・ダブリュー・ジャパンの中西さん、お願いします。

中西(DFree):
我々はトイレのタイミングを事前に予測するサービス「DFree(ディーフリー)」を作っています。IoTデバイスの中に超音波センサーが入っていて、これをお腹に貼ると膀胱の膨らみを捉え、今どれぐらい溜まっているか、そろそろですよという通知をお知らせするデバイスです。

中西(DFree):
DFreeはもうすでに量産も始めていて、また排尿だけではなくて排便や、装着をしやすくするというような技術開発もどんどん進めています。
お年を召されると急な排泄に怖くなって外に出られなくなるという方がいらっしゃいますが、ある意味でその状態は自分らしくない。そんな状態の改善に、一歩後押しできるうなデバイスとして普及していきたいと思っています。

西村:
それではno new folk studioの菊川さん、お願いします。

菊川(orphe track):
no new folk studio代表取締役の菊川です。
僕らは「スマートフットウェア」と呼んでいる靴の中にセンサーやコンピューターが入ったスマートシューズ「ORPHE(オルフェ)」を開発しています。

ちょうど今履いているのが「ORPHE TRACK」というセンサーシューズで、簡単に申し上げると、履いているだけで足のあらゆる動きを解析し、記録してくれるIoTの靴です。着地のたびに動作を1個1個解析して光ります。着地の角度とかに応じて色が変わったりもする。着地から着地までの歩幅、足がどれだけ上がっているか、接地角度、衝撃、スピードなどの情報を収集・解析しています。

主にランニング市場を狙っているのですが、例えば膝に痛みを抱えているランナーは30%以上もいると報告されていて、その一因はランニングフォーム。フォームは今まで独学で学ぶか、教えてもらうしかありませんでしたが、ORPHE TRACKを使えば、データからフォームを改善できるようになります。
オープンイノベーションという文脈では、アシックスとスマートフットウェアの共同研究をしたり、自分たちがスマートフットウェアを売っていくのではなくて、テクノロジーを大手メーカーさんに使ってもらうという取り組みをしています。

西村:
ありがとうございます。では、コードミーの太田さんお願いします。

太田(コードミーワン):
皆さん、こんにちは。コードミーの太田と申します。
香りとITを軸にして世の中をもっとワクワクする世界にアップデートしていこう、という想いで会社を作りました。なぜ香りかというと、私はもともと香料会社でずっとフレグランスの開発をしていたからです。

具体的には「CODE Meee ONE (コードミーワン)」というサービスを作っています。まずフォーカスしているのは誰もが抱えている「ストレス」。現状なかなか健康的にストレスを解消する手段がないというところで、その課題にアロマという切り口で挑戦しています。今までのアロマとは違って、パーソナライゼーションを軸として個人のストレス課題に対応して最適な香りをお届けしているのが特徴です。
アロマというと「女性寄りのサービス」という印象を持たれる方も多いかもしれませんが、コードミーワンのコアターゲットは男性。香りは国産の天然精油をメインに活用し、ボトルのパッケージもすべてMadi in Japanにこだわっています。

コードミーワンは、AIとSNSを連動させて最適な香りを作ります。期待するエモーション、気分を上げたいか、リラックスしたいか、仕事に集中したいかなどを選択。香りの好みも最大3つまで選べるシステムになっています。オプションでTwitterと連携も可能。最新の投稿データ200件をAIでテキスト解析して、ユーザのパーソナリティ診断を実施。更にカスタマイズされた香りがレコメンドされます。

信用できる大企業の条件

西村:
さて、パネルトークにいきたいと思います。まず大南さん、皆さんに聞きたいことを聞いちゃいましょうか。

大南(資生堂):
資生堂の大南です。資生堂もこれからオープンイノベーションに取り組んでいくということで、オープンイノベーションについて質問させてください。
皆さん、とても面白いプロダクトを出していますが、大企業ともコラボしていますよね? 皆さんどのように最初のコネクティングポイントを取られたのでしょうか?

中西(DFree):
サービスローンチ当初、DFreeの記事がバーッと広がりまして、そこから多くの企業に声をかけていただきました。あとはこういったイベントからの繋がりですね。

川野辺(teplo):
最初の繋がりはアクセラレーションプログラムです。現在パートナーになっている、キリンホールディングスのプログラムに参加しました。

菊川(orphe track):
コラボといってもレベル感がありますが、大きく取り上げられたのは、三菱UFJ信託銀行さんのアクセラレーションプログラムでしたね。

太田(コードミーワン):
コードミーも、最初は音楽のヤマハのアクセラレーションプログラムです。

大南(資生堂):
スタートアップと大企業がコラボする際、中には悪い大企業がいるという噂を聞いています。たとえば情報だけ求められて、具体的な成果は出ない、などですね。こういった危険な大企業の見分け方はありますか?

川野辺(teplo):
我々は今のところ、そういった嫌な思いをしたことはないです。最近オープンイノベーションに色々な企業が取り組んでいて、大企業の方もスタートアップに慣れてきているのではないでしょうか。
とはいえ調べはします。やはりスタートアップのコミュニティに聞くのが一番良くて、アクセラレーションプログラムだったら、以前に参加している方にヒアリングをしますね。

中西(DFree):
そういう意味だと川野辺さんのおっしゃるとおりで、レピュテーションはすごい大事。いい悪いの判断はなかなか難しいんですが、やはり大企業が自分たちの利益のためだけにスタートアップと組もうとすると、スタートアップとの足並みが揃いません。スタートアップは新しいことにチャレンジしているので、やはり10年ぐらいのスパンで考えていただけるかどうかはが大事だなとは感じます。

菊川(orphe track):
簡単に判断できるのは、裁量や意思決定のプロセスが説明できる人はそれなり信用できるのかなと。
スタートアップは本当に命をかけて事業をやっています。辛口に言わせていただくと、命が懸かってる人の時間を取っているということを考えてほしいですね。

太田(コードミーワン):
スタートアップがどんどん出てきているとはいえ、この世界はとても狭いコミュニティです。なのでレピュテーションはすぐに広まります。それもあってか、企業側もうかつに変なことはできないんだろうな、という空気をなんとなく感じています。
またアクセラレーションプログラムを何回も回しているところだと、採択されたスタートアップのbefore / afterがわかります。具体的な成果が出ているのかどうか、ということですね。これからアクセラレ-タープログラムに参加するスタートアップの目線でいうと、そこを見て判断するというのは1つの軸になるのではないでしょうか。

大南(資生堂):
勉強になりました。大企業の中にいると、なかなかそういうのがわからないので、どうしたらスタートアップから見て魅力的になれるのか、と考えていかなくてはなりませんね。

オープンイノベーションのプロたれ

大南(資生堂):
アクセラレーションプログラムでいうと、具体的にはどのようなアセット・リソースが役に立ちそうですか?

川野辺(teplo):
何が嬉しいかという観点で言うと、起業初期の段階だとブランディングの力はすごく嬉しいです。teploの場合ですが「ここの企業とやっているよ」と言った時に、例えば金融機関の付き合い方が変わったりするんですね。

太田(コードミーワン):
スタートアップの目的とステージで変わってくると思います。コードミーの場合は、IBMとも取り組みをしているのですが、今の川野辺さんの話と同様、これは信頼を得ることも目的のひとつでした。名もなきスタートアップがIBMと連携している。これだけでBtoBはグッと信用力があがります。
次のステージだとスケールを見据えて、販売チャネルやロジスティクスで協力いただけるのであれば、とても魅力的です。

菊川(orphe track):
今太田さんが言っていただいたような、ステージによって求めるものが違うというのは、すごい重要な前提ですよね。コラボレーションする大企業側の方も、できるだけスタートアップののビジネスモデルやエコシステム、ステージの理解が必要です。
「大企業でリソース持っているから、組めたら嬉しいでしょう?」という魂胆の見え隠れがたまにありますが、そうではなくて、オープンイノベーションをやる上で、プロとプロのやり取りとして、お互いに勉強してやる必要があります。すみません、めっちゃ偉そうですね(笑)。

でも僕たちは、少なくともお金を頂いて何かやるんだったら、当然プロとしてプロジェクトを提供しようとするわけです。それは当たり前で、逆に相手側も当たり前にスタートアップに出せるベネフィットは何かというのを突き詰めていったほうがいいのかなとは思います。

中西(DFree):
同じような話にはなりますが、基本的には強みと強み、弱みを補完し合う関係のが一番理想だとは思います。

大南(資生堂):
スタートアップと大企業が対等なマインドを持つことがすごく大事だなというのを、改めて思いました。ありがとうございます。

西村:
以上でスタートアップと資生堂のセッションを終了します。どうもありがとうございました。

資生堂R&Dオープンイノベーション「fiboba」参加のスタートアップ募集中

(編註:募集は既に終了しています。)
fibonaでは2019年8月29日に、資生堂社内のピッチ会「fibona Pitch Stage」を開催予定。現在登壇するスタートアップ5社程度募を集中だ。fibona Pitch Stageに登壇したスタートアップには、資生堂から共同研究、提携、出資などの提案をする可能性がある。評価項目は「アイディアの新規性」「ビューティとの親和性」「実現性の高さ」「競合優位性」など。応募締め切りは2019年7月26日(金)だ。
募集分野は幅広く「beauty wellness」だが、R&D部門によるオープンイノベーションなので、資生堂の研究開発内容を活かせるプロダクトのほうが相性はいいかもしれない。若いスタートアップにも門戸は開かれているので、fibonaに興味のあるbeauty wellness分野のスタートアップにはぜひ検討してほしい。fibonaの詳細は以下から確認されたい。

オープンイノベーションプログラム”fibona”がはじまります
https://spark.shiseido.co.jp/topics/719/

WRITING: 納富 隼平(pilot boat)
PHOTOGRAPH: Kengo Hino

Project

Other Activity