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Co-creation With Consumers サンケア×ランナープロジェクト #2

2020.02.28

fibonaの活動のひとつとして、S/PARKの施設やコンテンツを活用し、研究員とコンシューマーが直接コミュニケーションしながら商品やソリューションを開発していく「Co-Creation with Consumers」。

そのなかで今回行われた「サンケア×ランナープロジェクト」は、ランニングを日常的に行うコンシューマーと共に新たなサンケア製品について考え、そのプロトタイプを開発するというもの。資生堂グローバルイノベーションセンターでサンケア製品の開発に携わる研究員3名と、私生活で定期的にランニングを行なっているコンシューマー代表の一般女性5名がS/PARKに集合し、ディスカッションや実際のプロトタイプを使用してのランニングプログラムなどが行なわれたワークショップが、2日間にわたって実施された。
Co-creation With Consumers サンケア×ランナープロジェクト#1

今回は、当プロジェクトに参加した氏本、岩見、西ら研究員3名と、企画を担当したfibonaメンバーの豊田、古賀に、当プロジェクトを通じて得た気づきや感想を語ってもらう。

まず、今回の「サンケア×ランナープロジェクト」はどのようにして実施されることになったのでしょうか?


豊田:
ここS/PARKは、1、2階にお客さまが集まるような施設があるということももちろんですが、その同じ屋根の下ですごくたくさんの研究員が、日々化粧品開発に真摯に取り組んでいるというのが最大の特徴だと思っています。以前より私たちは研究開発を進めるにあたって、お客さまを中心に据えた活動を様々な形で取り組んできましたが、このS/PARKへの移転はそれらの活動をさらに加速させる大きなチャンスだと感じていました。その第一歩として、ここS/PARKの施設やコンテンツを活用しながらお客さまと研究員とがコラボレーションできる取り組みをなにかできないかを検討していました。そのような中で今回は“スポーツ”を軸に、S/PARK Studioのランニングプログラムとサンケア製品開発を組み合わせたら相性が良い取り組みとなるのではないか?ということでこのプロジェクトがスタートしました。

古賀:
私はちょうどS/PARKができたのと同時に資生堂に入社したのですが、それまでもずっとコンシューマー調査や共創型の取組みなどをやっていました。そういった活動のなかで目にしてきたのは、最も製品について研究をしていて、ものづくりの現場で手を動かしている人たちが実はお客さまと触れ合う機会をなかなか持ちづらいということ。資生堂では化粧品を開発していくにあたって、これまでもユーザーとなるお客さまに製品を使っていただいてご意見をいたいたり、生活の中にあるニーズや悩みの深掘りを一緒に考えたりと、様々な形でお客さまと研究員とがコミュニケーションをとるような取り組みをしてきています。都市型オープンラボとして開業したS/PARKでは、これまで以上に様々な形で実際にものづくりをしている人がお客さまと触れ合う機会を積極的につくっていかなければいけないと思っています。そのなかで、製品を使っていただくだけでなくお客さま側もつくることに参画できるような仕掛けづくりをしてみたいと思いました。

最初にこのプロジェクトの話を聞いたとき、どう思いましたか?


氏本:
私はずっと陸上をやっていて、定期的に走っているのですが、やっぱり走るときにはサンケアが欠かせません。なので、いつかランナー向けの日焼け止めをつくりたいと思っていました。加えて今回コンシューマーの方と一緒につくると聞いてなおさら興味が湧きました。アサインされたときは、即「やります」とお返事しましたね。

岩見:
始めは正直、どういうものなのか想像がつきませんでした。ですがコンシューマーの方に会って、自分たちがつくったものを直接評価してもらえるというのはあまりない機会なので、すごく好奇心をそそられました。それから、私もずっとテニスをやっていたのでスポーツ時のサンケアには気を遣ってきました。なので、今回のプロジェクトで良いものができたらいいなと思いました。

西:
私は日頃からランニングをしていて、去年初めてフルマラソンにも出場しました。そういったことがあって今回アサインしていただけたと思っているのですが、今年入社したばかりで、こんなにすぐにお客さまと触れ合う機会をいただけるのはすごくありがたいと感じましたし、とても楽しそうだと思いました!

初めての試みだったかと思います。なにか不安に感じることはありましたか?


氏本:
コンシューマーの方とコミュニケーションをとるにあたって、お互い初対面なので壁はあるだろうな、と思いました。そのなかでいろいろとお話を聞いていかなくてはならないので、業務的な会話にならないためにはどうしたら良いかという点は少し不安でした。ですが、岩見さんはコンシューマーの方と会って、わりとすぐに打ち解けた雰囲気でお話しされていたので、すごいなと思いました(笑)

岩見:
コンシューマーの方はみなさん歳も近そうで、女性同士だったので(笑)。あまり“研究員”という感じを出さないように心がけました。まずは仲良くなれるようにと、私から積極的に喋りかけていきましたね。

そのようにコンシューマーの方とコミュニケーションをとるうえで工夫したことについて教えていただけますか?


岩見:
どういうことに興味を持っているのか。何をしているときが幸せなのか。そういう、研究とはあまり関係のないお話もたくさんしました。「どういう生活をしているのかな?」というところから、思わぬ気づきなどがあるかもしれないので、ランニング中は飼っている犬の話を聞いたりしていたんです。ランニングをして帰ってきてから、コンシューマーの方との距離がぐっと近くなったように感じました。そういう他愛のない話をすることで、距離って縮まっていくものだと実感しましたね。

氏本:
先ほどお話ししたように、初対面の方とのコミュニケーションが上手くいくか不安だったこともあって、なにか会話の種になるような、そして言葉に頼らなくても伝えられる仕掛けが欲しいと思いました。それで、製品づくりに用いられている技術を説明する実験のデモンストレーションをワークショップ内に組み込むことにしました。

岩見:
いざやってみたら、デモンストレーションがあるのとないのでは全然違ったなと実感しましたね。みなさんすごく興味深そうに見てくださって、すごくリアクションが良くて嬉しかったです。しかも、実験デモを見ていただいたことがその後の製品評価にもつながったんです。やっぱりわかりやすく伝えるということがすごく大事で、それがあるのとないのでは最終的な評価もこんなに違うのだなということを知りました。

第1回目と第2回目のコンシューマーの方々とのワークショップの間、1ヶ月で製品プロトタイプやプレゼンテーションの改善が行われました。その際、3人でどのようにコミュニケーションしましたか?


岩見:
プレゼンテーションの面では、出来るだけポジティブな言い回しになるよう心がけました。実は、第1回目のワークショップでとあるコンセプトを提示したところ、コンシューマーの方から「その効果の言い回し、なんだか『気持ち悪いな』って感じます」というご意見が出たんですね。ですので、そこで出た意見やお話、自分が感じたことを参考にして、なんとか気持ち悪い表現にならないよう努めました。結局、まだ少し気持ち悪いと言われてしまいしたが(笑)

氏本:
やっぱり言葉で伝えるのって難しいですよね。薬機法などの関係で表現として言えること/言えないこともありますし、こちらの意図をそのままストレートに言葉にすると、若干気持ち悪い、不自然に聞こえてしまったりすることもある(笑)。いつも実験をして処方開発をする仕事をしているので、外に向けて発信することはあまりやったことがなかったので「伝えるのって難しい」というのを痛感しました。

氏本:
それに、僕たち研究員は普段それぞれの研究テーマの推進や担当製品の開発にあたって、個人で業務を進めていくことが比較的多いんです。もちろん必要に応じて関連する人たちとコミュニケーションや関連テーマとの連携はとりますが、すべての工程を話し合いながら進めていくというよりも、個々でそれぞれの目標に向かって進めていくことが多い。ですから、今回のプロセスのように、多くを研究員同士で話し合いながら何かをつくるっていうこと自体も新鮮でした。

岩見:
私と氏本さんは部署内でも同じチームなので、話し合ったりすることは無きにしもあらずなんですが、西さんとは担当するアイテムが異なる別のチーム。これまで違うチームの人と組むことはなかったので、そういうのもすごく新鮮で楽しかったです。あとは、第1回目と第2回目のワークショップの間が1ヶ月しかなかったので、「やるしかない!」という空気感のなかでぐっと集中してやりました。

古賀:
合宿みたいでしたね(笑)

岩見:
そうですね!毎日「どうしよう、どうしよう」と言いながら3人で考えていて。それもすごく楽しかったですし、とても良い経験になったと思っています。

西:
ゴールに向かう道筋はいくつかあったのですが、どの道が最適なのかを決める部分というのは、きっと一人だとなかなか決められなかったと思います。いろいろと話し合いながら取捨選択して。最終的に良い感じにまとめられたので、すごくよかったなと感じています。

実際にコンシューマーの方と一緒に時間を過ごすなかで感じたこと、印象に残っていることを教えてください。


西:
ランニング後、私たち研究員もコンシューマーの方と一緒にS/PARK Studioでシャワーを浴びて、同じ更衣室で着替えをしました。その際に、日焼け止めを塗ってシャワーを浴びた後の肌の乾燥具合を気にされている方がいて。乾燥というと顔の方に私はフォーカスしてしまいがちなのですが、自分が思っていた以上に体の方の皮膚が乾燥してしまうのを気にしている人もいるんだ、と気づかされました。

岩見:
日焼け止めの“塗り方”もそうでした。手のひらを使わずに日焼け止めを体に塗る方がいらっしゃって。手のひらに出してしまうとその分が「もったいない」という考え方をされていました。その方も、もしかすると調査などの“非日常”の場では普通に手のひらに出して塗っていたかもしれないですが、今回より長い時間を一緒に過ごすことで、そうしたコンシューマーの方の“日常”の風景を垣間見ることができたように感じています。

今回のプロジェクトを通しての発見や細かな気づきは、今後の研究や開発に反映されていきますか?


氏本:
日常でのリアルな使い方を知れたことなどは、新しい発見になったと思っています。いつもはあくまでも“基本的”な使い方を知り、それに沿うかたちでつくっているので。

古賀:
今回、製品の中身だけでなく外装も含めての気づきを得たように感じています。意外とパッケージについてもいろいろと意見が挙がっていました。「ちょっとこういうのはもう古いのでは」など(笑)。みなさん結構ズバズバと意見を出してくださいましたね。

氏本:
つくるものが決まったら、「もう少しのびを良くしたほうがいいかも」「ベタつきを抑えたほうがいいかも」という具合に考えながら微調整を繰り返していくのですが、意外に消費者の方もそういった“わずかな違い”を敏感に感じていらっしゃるものなのだと知りました。第1回目のワークショップで「もっとこうなって欲しい」と言われ、使用性を変えて第2回目のワークショップで出したら「すごい、のびが良くなっている」と評価してくださったので、自分が思っていた以上にそういう部分もしっかりと見ているし、気づいてくれている。可能な限り微調整をすることも大事だと再確認させてもらえました。

岩見:
自分が関わっている製品がどのように売り出されているか、どのような情報とともにアピールされているか、という部分を今後はもっと気にしたいと思いました。つくったら終わりではなくて、その先のことももう少し気にしたい。私たちは「ここがアピールポイント」と考えて、そこが最も伝わるようなプレゼンテーションにしたつもりだったけれど、あまり伝わっていないということもありました。お客さまにとってそのアピールポイントがウケていないわけではないけれど、響いていない。そういうのは、やっぱり実際に喋ってみないとわからないですね。

西:
そうですね。やっぱり、どれだけ頑張ってつくっても伝わらない部分があるということを感じました。なので、日頃の研究でそれを意識することはもちろん、今回のようなワークショップやイベントがあったら、今後は自分も積極的に参加して、そこでお客さまやコンシューマーの方とお話ができるようになれば良いなと思いました。やっぱりつくった人もなにかしら直接発信できる場を持っていたほうが、お客さまにはよりしっかりと伝わるはず。このS/PARKもあるので、そういったことが今後よりたくさん行われていくと嬉しいです。

次は「こういうテーマでやってみたい」ということがあれば教えてください。


氏本:
プロアスリートの方と一緒に今回のようなワークショップをやって、どういういった製品が欲しいか聞いてみたいです。よりニッチな製品ニーズを覗いてみたいですね。

岩見:
今回はコンセプトが決められているところからのスタートだったので、次は自分がつくっているものをひとつ、お客さまに見せてみるというのをやってみたいです。自分で考えて、良いと思ってつくったものをお客さまに見せたときに、どういうふうなリアクションをするのか。今回のように直接会える場がまたあれば、ぜひそれをやってみたいと思います。フィードバックを受けて製品自体を改善したいというのはもちろん、そのアピール方法の工夫にも活かしたいです。自分が好きで、興味を持ってつくっているものを、お客さまに対して一番良いかたちでお伝えするにはどうしたら良いのか。そんなことについても考えられたら面白そうですよね。

西:
期間は今回よりももう少し長くなると思うのですが、ゼロから一緒につくりだすということをやってみたいと思いました。ものづくりというよりもコンセプトづくりになってしまうのかもしれませんが、どんなものを求めているのか?まずはそういったコンシューマーの方の声を拾い、そこからなにが出来るのかを探っていく。そんな“トータル”でのものづくりというのを一度やってみたいです。

プロジェクトを企画した立場として、感じたことを教えてください。


豊田:
一般のコンシューマーの方と、普段研究をしている研究員とが同じ場所で一緒に取り組みをするというのは、私たちにとっても初めての試みでした。どのくらいの準備や場づくりを自分たちが行うべきかわからないままプロジェクトは進んでいきました。そんななかでポジティブに進行に参加してくれた研究員3名の主体性というのが、すごく良い意味で予想以上だったように感じています。自ら実験のデモンストレーションを組み込んでくれたり、行き詰ったときはS/PARK Beauty Barに行き、いろんなサンプルを触りながらディスカッション進めてくれたりなど。どうやって自分たちのアウトプットを最大化するかということについて、常に考えてくれていたという印象です。通常業務もあるなかで、すごく積極的にこのプロジェクトに取り組んでくれて感激です。

古賀:
この「サンケア×ランナープロジェクト」で私が最も素敵だと思っているポイントがあって。それは、“もの”を介してコミュニケーションをし、一緒にものづくりをしているということです。製品のプロトタイプをつくり、それを一緒に使い、同じ走るという体験を一緒にしながら会話をしていく。同じものを同じ空間で触りながら話すことが非常に重要だと思うんです。例えば、ワークショップ内で「キシキシする」という表現が出たのですが、同じ場で同じものを使い、触っていたから同じ意味合いで受け取ることができました。また、研究員同士での「どういう香りがいいか」という議論が一時停滞してしまった際に、S/PARK Beauty Barに行き、さまざまな商品を手にとってみたらまた議論が再開したということもありました。ものを一緒に触ることによって、コミュニケーションがより深まるということは大いにあると思います。

プロジェクトを終えて、感じていることを教えてください。


氏本:
まずは「楽しかった」というのが一番です。なにか“もの”をつくれるということが僕ら研究員の強みなので、「こういうものが求められているんだ」とわかれば、それをつくりたいと思いますよね。しかも今回は“ランナーが求める日焼け止め”ということで、少しニッチな需要に向けた研究開発のトライだったのでなおさら楽しかったですね(笑)

岩見:
一緒に走ったのがすごくよかったなと感じています。ただ向かい合ってお話をするだけだったら、あまり距離が縮まらなかったと思います。そうしたら多分、飼っている犬の話なんてしなかったと思うんです。走っている途中だと、これは私の感覚ですが、なんとなく雰囲気がユルっとする。心を開いてもらいやすくなるような気がします。私自身が楽しい、コンシューマーの方たちもきっと楽しい、そんな空間を一緒につくれたこともすごく貴重な経験になりました。それから、今回のワークショップを経て「お客さまは想像以上に細かく見てくださっている」と感じました。日頃研究室に居て「この微妙な違いは伝わるのかな?」「この機能って本当に重要なのかな?」「この言い方で伝わるのかな?」と、なんとなく怪しんでいたことを直接確かめることができて良かったです。

西:
使う人のリアルな日常に寄り添ったものづくりというのが、このS/PARKでできたということに喜びを感じました。さらに、自分たちでもS/PARK Beauty Barを利用するなど、この施設の特徴を生かした製品づくりができたのかなと思っています。お客さんの声も直接聞くことができ、総じて楽しかったです。

今回のプロジェクトを終え、今後はどのような企画が考えられるのでしょうか?


豊田:
今回のようにお客さまと一緒にものづくりをしていくというのは、そもそも資生堂の研究所がここに移転して来た理由のうちの大きなひとつだと思っていますし、以前から積み上げてきたお客さまとの活動をさらに発展させて、このS/PARKでしかできない活動にしていきたいと思っています。なので、よかった部分はもちろんのこと、反省しなくてはならない部分や次回に向けた改善点を振り返り、S/PARKらしい新しいものづくりのプロセスとしてきちんと残していけるようにしたいです。どのようなテーマでやっていくかはまだわかりませんが、なにかしらのかたちで継続させて、発展させていきたいと思っています。

古賀:
すでに今回のプロジェクトのことを知った他製品の開発グループの方から「どのようにやっているのですか」とお問い合わせをいただいたり、ご相談を受けていたりするんです。しばらくはトライアンドエラーを重ねながらでやっていくことになるのですが、もう少し体系化していき、他のチームでもいつでも実施できるような仕組みにしていけたら良いなと考えています。

豊田:
研究員がごく日常的に1、2階部分と研究所とを行き来するようなかたちができると、本当に理想的だなと思っています。それはS/PARKらしさが存分に出た最終形だと捉えていて、今回はまずその第一歩。どんどんステップアップさせていきたいですね。

Project

Co-creation with consumers

「S/PARK Studio」などのS/PARKの施設やコンテンツを活用し、商品体験や使用後のフィードバックなどを研究員と生活者が直接コミュニケーションすることで、生活者視点の商品・ソリューションを開発します。

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