Interview

S/PARKは自分らしさを発見する場所ー小山薫堂

POSTED on 2018.11.30

『資生堂グローバルイノベーションセンター:呼称「S/PARK(エスパーク)(以下、S/PARK)」』は、社内外問わず多くのパートナーと共に作られています。
今回は、そのおひとりである、放送作家や大学の副学長を務め、くまモンなど様々なブランドプロデュースやブランドデザインを手がけられている、株式会社オレンジ・アンド・パートナーズ 代表取締役社長 小山薫堂さんに、「S/PARKで大事にしたいこととは。」、また、「美」についてどのようなイメージをお持ちなのか、お話を伺いました。

資生堂のイメージは「文化のパトロン」

— まず、小山さんがどのようにS/PARKに携わっているのか教えてください。

S/PARK1〜2Fをどのような場所にするかというご相談をいただきまして、コンセプトを一緒に考えました。資生堂にとってS/PARKがどのような場所でなければいけないのか、また、消費者の方や横浜という街にとっても、どのような場所が望ましいかを考える段階から、関わらせていただきました。

— 今回に限らず、長く資生堂とおつきあいがあると伺いました。小山さんから見る「資生堂」のイメージと、S/PARKに期待する変化について教えてください。

僕の勝手なイメージですが、資生堂は「文化のパトロン」いう印象があります。というのも、僕が最初に資生堂さんとおつきあいが始まったのはテレビ番組だったんですね。いろんな企画を持って行くと、より文化的なものほど通りやすかったという経験があります。
1973年東京・銀座に誕生したフランス料理店『ロオジエ』も、フランス料理の文化を日本に根付かせたいという背景があるなど、非常に文化に対する思いが強い企業だなという印象がずっとありました。

今回、S/PARKが新しくできることによって、「文化のパトロン」でもありながら、非常に新しいものを作り出していくイノベーターでもなければいけないという宣言がここにあるような気もしています。今まではどちらかというと文化を支えていたというイメージが強かったのですが、これからは引っ張っていく感じがより強くなっていくのかなと思っています。


— S/PARK1〜2Fのコンセプトは、どのようにアイデアを膨らませていったのでしょうか。

光や匂い、音などの「感覚」で感じるもの……検討当初は、そういうものを大切にする資生堂らしさを、「万物資生※の森」というようなイメージを描いていました。建物に入ったときに、「ただかっこいい」とか「ただ斬新」ではない、「五感」に響く場所がいいのではないかというところからスタートしたんです。

※社名「資生堂」は、中国の古典『易経』の一節で「至哉坤元 萬物資生=”至れる哉(かな)坤元(こんげん)、万物資(と)りて生ず”」=「大地の徳は、なんと素晴らしいものであろうか。全てのものはここから生まれる」から由来された。

一番初期段階のイメージがあります。ロサンゼルスの「LACMA」という美術館の入り口で、これは自然のものではなく人工物なんですけど、ものすごく「愛」が似合う場所だと思ったんです。たまたま僕が行ったときに男性が女性にプロポーズしていたのもあるんですが、「愛」という言葉がいっぱいここに詰まっているような感じがして。

そうそう、プロポーズ中の写真を撮ってあげて送ってあげたんですよ。そこから彼らと深い友情が芽生えるかと思いきやなんの連絡もなく……がっかりですよ(笑)。

「美しさ」という種、イノベーションを発芽させる「人」

— 「イノベーション」とはどのようなものだと思いますか?

「世の中が必要としているものを発明する、あるいは世の中が抱えている課題を、新しい技術や発明によって解決する」ということだと思います。
「イノベーション」というキーワードは、つまるところ「人」がポイントだと思うんですよね。だから人が集う場所を作らなければ行けませんし、人が何かに気づいたり、新しいものに出会う場所にしなければいけない。研究室にこもっていた社内のみなさんが、S/PARKの1〜2Fに降りて時代の空気を肌で感じたりすることによって、何か新しい閃きが生まれるかもしれません。そういった化学反応をどうやって起こすか、また化学反応が起こりやすい空間にしなければいけない、というのは最初から課題だったと思います。


— S/PARKが建設されるみなとみらいという街についてどう思われますか。

新しい挑戦に対して抵抗がない企業がこの地域にはたくさん集まると思うんですよね。この土地だからこそ挑戦的なことができる雰囲気がみなとみらいに漂っている気がします。なので、この街にS/PARKを構えることには大きな意味があると思いますので、周辺企業やここで働いている人をどんどん巻き込みたいですね。将来S/PARKがこのみなとみらいという地域の大きな財産となることは間違いないと考えています。

— 活動的な企業が集うみなとみらいで、S/PARKが特に大事にしたいことはなんですか?

「美しさというものが全ての種になる」ということですかね。イノベーティブな場所や、人と人が出会う場所って他にもたくさんあると思うんです。コワーキングスペースも増えていますし。ただ、やはり資生堂には「美」というものが真ん中にあると思うんですね。「美しさとは何か」という疑問であったり、「美しくなりたい」という想いとか。それは「女性の美」だけでなくて、きっと「アート」のようなものもあるかもしれませんし、「人が美しいと感じるものはなんだろう」といった、やや哲学的なものも含めたイノベーションセンターなのかなと思います。そういう「美」をテーマにして人が集ってくる場所は、世界でもなかなかないんじゃないかなと。

自分らしく生きるための「美の基準」を発見できる場所

— 小山さんの考える「美」とはどのようなものでしょうか。

「心の中の針金」みたいなものですかね。「美」って、ちょっと背筋を伸ばすような作用ってあるのかなと思うんです。「心地よさ」ってややもすれば、ダラダラしがちになったりとか、自分にとっての「怠け」みたいなものが出てくるような気もします。

「美」は時として、自分を励ましたり、叱咤激励したり、それを磨くために努力をしなければいけないこともあるかもしれません。そういう意味で、「一本芯を通す針金」のようなもののように思います。常に背筋を伸ばして、自分らしく生きるための、「自分らしさを見つけるための地図」みたいなものにも繋がってくると思います。

— おもしろいですね。あくまで地図であり、それを頼りに自ら動く必要がある、と。

なにもしなかったら、なにも見つからない気がするんですよね。やはり、磨いてこそ輝くものじゃないですか。自分が努力をしたり、自分を磨かないといけない目標のようなものであり、マラソンに置ける伴走者みたいなものでもあり。
それに「美」は個々によって違うと思うんです。同じ美しさ、おそらく「美の基準」ってなくて、それぞれの中にそれぞれの「美の基準」があればいいのかなと思います。


— S/PARKは資生堂から一方的に与える場所ではなく、来場者がそれぞれの「美」を見つけられる場所なのですね。

結果としては、来ていただいた方に何かを持って帰ってもらうことにはなると思うんですけど、ただ与えられるというよりも、自分で気づいた方がきっといいのではないかと思うんです。たぶん、内側から湧き出てくるものに自分で気づいたら、ますます努力したり、表情が変わったりするかもしれないですし、より綺麗になっていくのではないでしょうか。


— それは資生堂の社内の人にも言えることですか?

そうだと思います。自分が誰かの変化のきっかけになったりとか、誰かの「幸せ」を見つけたり、「美の案内人」であったり、「コンパス」みたいな存在になれたら、きっとその人自身も磨かれると思いますし、おそらく自信にも繋がるでしょう。その幸福感というものが、さらに美しさに繋がっていくと思います。


— お客さまや資生堂の社員にも、主体的に「美」というものを考えることができる場所ですね。

そうですね。何より「自分」であることが大事だと思います。自ら動くことで自分らしさが見つけられる、「発見の場所」ですよね、ここは。