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SHISEIDO OPEN INNOVATION 2021 最終審査開催、新たにスタートアップ企業2社と共創へ

2022.01.18

2019年に始動し、今年で3年目となる資生堂のオープンイノベーションプログラム「fibona」。その活動の柱のひとつ「Co-Creation with Startups」では、スタートアップ企業の斬新なアイデアやユニークな技術を資生堂の知見・技術・サービスと融合させてイノベーションの創出を目指す。

新たな共創パートナーとなるスタートアップ企業の探索を目的とした「SHISEIDO OPEN INNOVATION 2021」の最終審査が資生堂グローバルイノベーションセンター(S/PARK)にて11月24日に開催された。
「SHISEIDO OPEN INNOVATION 2021」は、資生堂が主導で行うスタートアップ企業との連携プログラムの第2期にあたる。2019年に実施した第1期と同様に「Beauty Wellness」におけるイノベーション創出を目指す。

約2年ぶりの開催となった今回の取り組みは、「データ」「コミュニケーション」「ソリューション」を軸に3つの募集テーマを設定。約1カ月間の募集期間を経て、約50件の応募があり、書類・面談選考を経て、最終プレゼン審査に挑む5社が選抜された。

当日のプレゼンを踏まえて、採択する企業を決定する審査員は5名。第1回のピッチでも審査員を務めたfibonaのオーナーであり、R&D戦略部長の荒木秀文、チーフテクノロジーオフィサーの吉田克典、シーズ開発センター長の佐藤潔に加え、今回は株式会社イプサ代表取締役社長の小田淳、チーフブランドイノベーションオフィサーの岡部義昭が新たに審査員として参加した。(※役職は最終審査開催当時)

審査員5名の挨拶を経たのち、早速各社のプレゼンがスタート。各社のプレゼン時間は5分。その後、審査員からの質疑応答の時間が設けられた。


「スタートアップ企業として、すでに初期ステージを超えてさまざまなビジネス展開をされているが、資生堂と共創するにあたってのソリューションはどう考えているか?」

「世の中のインサイトを適切に捉えた提案であり、独自の着目ポイントはとても良いと思う。既存のライフスタイルとは異なる、新たな具体的なアウトプットのイメージはあるか?」

「値を測る指標は他にも多数あるが、その指標ならではの強みは何か?」


資生堂と共創することでどんなイノベーションの可能性があるのか。その技術にはどのような価値があるのか。そして、ビューティーに対する考えは...?質疑応答では、多方面からの質問や真摯な応答が行き交い、活発な議論が繰り広げられた。

1社のオンラインプレゼンを含む全5社のプレゼンを終えた後、審査のため審査員は別室に移動。審査中、会場には各社のプロトタイプや資料の展示されており、研究員らは興味を持った点について熱心に質問したり、試したりしていた。

審査員が会場へ戻ると、審査結果が発表された。全体講評で荒木が「選定にあっては、お互いの事業が発展できる、Win-Winの関係になれるであろうことを前提に議論をした」と前置きし、2社がコラボレーション企業として採択された。

今回採択されたのは、株式会社イヴケアとSCENTMATIC(セントマティック) 株式会社。それぞれの企業の特色について紹介していく。

株式会社イヴケア 代表取締役社長兼CEO 五十棲計(いそずみ・けい)さん

一社目は、質問紙と毛髪を用いた健康状態のモニタリングと、その後のアフターケアが一体となったプログロムの提供をする株式会社イヴケア。

滋賀大学が認定した初のベンチャー企業であり、2019年に同大学院で学んでいた五十棲計さんが設立、代表取締役社長兼CEOを務める同社は、毛髪中に蓄積されたコルチゾールをはじめとするストレスホルモンを定量的に測定することで、その人のストレスの認識を促し、アフターケアのプログラムを提供している。

五十棲さんは、「毛髪は、尿や唾液よりも中長期的な測定ができるのが強み。数カ月に遡って蓄積を見ることができるため、仕事や日常という文脈からもストレスの原因を遡って調べることができる」と説明。従来の質問表による主観的なストレス値と、当人も無自覚な科学的数値で示されるストレス値、2つのアプローチからストレスを評価する独自性も高く評価された。

「我々は毛髪からストレスを評価する事業を行う会社だが、ストレスを評価する会社を作りたかったわけではない。ストレスを測定することでお客さま自身が心と体のバランスを認識し、ウェルビーイングに生きられるサポートができる社会を、資生堂と一緒に作っていきたい」

ストレス認知とウェルビーイング、ビューティーの接点をどう生み出していくか。新しい製品開発への寄与も含めて、多くの審査員が今後の共創に期待をかけた。

SCENTMATIC株式会社 代表取締役の栗栖俊治(くりす・としはる)さん

もう一社は、香りを言語に変換すると同時に、言葉から香りを選び出すことができるAIシステム「KAORIUM(カオリウム)」の開発・サービスを提供するSCENTMATIC株式会社。

代表取締役の栗栖俊治さんは、「言葉には五感がもたらす体験を拡張する力がある。ならば香りという曖昧な感覚と言語が融合することで、新しい体験ができるのでは?」と開発動機を語った。

質疑応答で栗栖さんは「香りのベンチャーは死屍累々」と現実を打ち明けながらも、香りと言葉の融合体験をデザイン・実装していくことの意義を、消費者の体験価値と企業の事業的価値の両面から熱弁した。

審査員からは事業の将来性が高く評価され、講評では「香りを用いたUX開発はもちろん、私たちが強みとしている感性領域についても一緒に取り組ませていただくことにより、お互いの事業が発展できるのではないかと思っている」と選定理由が述べられた。

これを受けて栗栖さんは、「我々のやっていることはIT領域であるものの、ロジックや言葉ではどうしても伝えにくい価値を追求してきた。だからこそ、感性という切り口で評価していただけたことを嬉しく感じている」とコメント。今後は香りによる新たなビューティー体験のイノベーションの具現化を目指す。

最後に審査員長の岡部から、採択に至らなかった企業への謝辞と期待、今後の共創への意気込みが語られた。

「惜しくも選定されなかったチームにも、この場を借りて深くお礼を申し上げたい。今回参加していただいた皆さまのような優れたソリューションを持つチームと、どんどんコラボレーションをしていくことで、私たち資生堂もイノベーションをさらに加速させ、生まれ変わっていける企業であり続けたい。今後も何らかの形で一緒にお仕事ができたらうれしく思う」

今回採択されたスタートアップ企業2社との共創に向けた取り組みは、どんなイノベーションを生み出していくのか。今後のfibonaとの連携や、そして双方にもたらす刺激と拡張性に期待して欲しい。


(text: Hanae Abe edit: Kaori Sasagawa)

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Co-creation with startups

ビューティーテック業界を中心とするスタートアップ企業との共創を目指したアクセラレーションプログラムです。

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