これが次世代メイク。「セカンドスキンメイク™」がHALLOWEENイベントで示した新体験と可能性
2023.12.8肌の上で様々な色を混ぜたり、重ね合わせたり、ビーズを貼り付けることができたら......?
そんな次世代メイクの可能性を探るハロウィンのイベントが10月28日、横浜みなとみらいにある資生堂グローバルイノベーションセンター(S/PARK)で開催された。
“多様な知と人の融合”をキーワードに、資生堂研究所が主導するオープンイノベーションプログラム「fibona(フィボナ)」。
今回は、肌の上に透明で柔軟なフィルム(第二の皮膚)をつくる「資生堂セカンドスキン技術」を生かしたメイクのイベントを実施。お客さまにメイクキットを体験してもらい、最先端テクノロジー「セカンドスキンメイク™」がもたらす新たな体験の可能性を探った。
イベント当日は、研究員らプロジェクトメンバーが、プロによる個性豊かなハロウィン仕様のヘアメイクを施し、お客さまを出迎えた。
「セカンドスキンメイク™」とは、一体どんなものなのか。
お客さまは、新たなメイク体験をどのように受け止めたのか。
担当研究員のインタビューと合わせて、秋の風が心地いい週末に実施されたイベントの模様をレポートする。
第二の皮膚をつくる「セカンドスキン」の新奇性
セカンドスキンとは、2018年に資生堂がアメリカのスタートアップ、
Olivo Laboratories社の特許技術「Second Skin」を買収
し、資生堂の技術と組み合わせて開発した皮膚を模したフィルム(皮膜)のこと。1剤目の美容液の上に2剤目の美容液を重ねて塗ることで、凹凸を補正する人工皮膚を肌上に形成し、シワやたるみを即時的に目立たなくすることができる。2020年には目袋のたるみを補正できる「
ビオパフォーマンス セカンドスキン
」が発売された。
「セカンドスキンメイク™」イベントの企画メンバーで、セカンドスキン開発チームでもある、みらい開発研究所シーズ開発センターの研究員、貞神喜郎によると、もともとは医療用途にも使われる安全な技術を、さらに化粧品向けに改良して商品化されているという。
「買収当初はたるみの補正効果が不十分だったり、時間が経つとはがれてしまったり、様々な課題があったそうです。当時の開発チームは自ら厳しい基準を設けて解決に当たり、ようやく商品化まで至ったと聞いています。当社ではこれまでフィルムの剤型がなかったので、その知見を集めるところからのスタートだったそうです」
セカンドスキンの新奇性について、貞神はこう話す。
「肌のたるみは、スキンケアを長期連用して肌を改善していくアプローチが一般的です。フィルムが生み出す物理的な力でたるみを補正するというアプローチで、更にここまで即時的に効果があるものは、当社ではセカンドスキン以外にはありません」
2023年11月には、改良版の「セカンドスキンN」が発売された。
「これまでは見た目の違和感でリピートに繋がらなかった方もいると思いますが、より自然な仕上がりに改良されています。また、たるみ補正という目的がはっきりした商品なので、その効果実感については特に厳しい基準が設けられていて、クリアできないうちは発売できません。この商品の生命線である“確かな効果”をお客さまに実感してもらえると嬉しいです」
表現だけでなく、「体験」そのものの面白さを届けたい
「セカンドスキン技術®」の独自性は、たるみ補正といった効果だけでなく、今回のハロウィンイベントのように、エンタメ性の高い表現もメイクで実現できる点にある。
「セカンドスキンメイク™」という新たな体験のヒントを探るべく、イベントの企画を立ち上げたのが、資生堂で口紅やマスカラなどのポイントメイクの開発を手がける林田啓佑だ。
「僕が主に担当している口紅の開発では、発色だけでなく色移りのしづらさや、色もちの良さを技術的に追求しています。色落ちや色移りの課題に対し、セカンドスキン技術®がうまく転用できるのではないかと考え、2年ほど前から検討してきました」
林田ら有志メンバーが、入社式でセカンドスキン技術®を用いたメイク姿を披露したこともきっかけになった。
「メイクアップアーティストの方に相談して、セカンドスキン技術®を使って特殊なメイクをしてもらいました。彼らが思っていた以上にセカンドスキン技術®を面白がってくれて、いろんなメイクを試してくれた。顔だけではなく耳にまで。メイクでできることの幅広さに驚きました」
プロによるメイクの拡張。そして自由な表現——。
「これは僕らでは思いつかないな」と林田はその驚きを振り返る。
実際に感じたのは、「表現」の新しさだけではなく「体験」そのものの面白さだった。セカンドスキン技術®は、2液を混ぜて使う煩雑なステップがネックだと思っていた。でも自分たちで体験してみると、その過程さえも楽しめていることに気づくことができた。
「新しいメイク体験によって、これまでにない化粧の文化を創造できるんじゃないかとワクワクしました」
こうしてポイントメイクへの転用から分岐して、「セカンドスキンメイク™」の新たな可能性を探るようになった。
色を重ね、素材を埋め込む。無限に広がる表現の可能性
入社式でセカンドスキンメイク™を経験したのが、同じくポイントメイクの開発を手がける近藤倭伽那。イベント1週間前にサポートメンバーに加わり、メイクキットの素材集めなどに奔走したという。
「テーマがハロウィンなので、お子さんも楽しめるようなカラフルでポップな素材を用意しました。ただ道具を用意するだけではなく、少しでもお客さまに楽しんでもらえたらと、この1週間は素材の買い出しに走り回る日々でした」と笑う。
セカンドスキン技術®を、ハロウィンのように多彩なメイク体験に転用すると、どのような可能性が広がるのだろう。
「セカンドスキン技術®は、立体的な表現ができるのが特徴です。通常のポイントメイクで使う色材は、2色以上の色を重ねると混ざり合ってしまいます。でもセカンドスキン技術®は膜になっているから、色を幾重にも重ねられ、油絵のような立体感が出せるんです」
「多少こすれても、色落ちしません。ラメやラインストーンのようなものを“埋め込む”こともでき、より立体的になります」
近藤自身も、好きなキャラクターをイメージしてデザインされたセカンドスキンメイク™を体験。目元には稲妻が走り、星のスパンコールが埋め込まれている。
「実際にメイクをしてもらうと、やっぱり気分が上がりますね。完成までの過程でテンションが上がっていく体験をお客さまにも味わっていただけたらうれしいです」
推し活、花びら....自分のアイデアをメイクで表現する体験
午前10時。開場とともに、研究員たちのハロウィンメイクを見て思わず笑顔が溢れる来場者のみなさん。
貞神が、セカンドスキン技術®の特徴や斬新な使い方を説明すると、お客さまからも「おお!」「すごい」と感嘆の声が漏れた。
いよいよ、お客さまによる「セカンドスキンメイク™」体験の時間。
各ブースの研究員たちによるレクチャーを聞きながら、和やかな雰囲気の中で、一人ひとりが道具を手に取り、自身の手元や顔などにメイクを始める。
手元でセカンドスキンメイク™の使い方を試しながら、オリジナルの絵を描き始めるお客さまの姿。
「セカンドスキンメイク™」を、初めてのユーザーはどう楽しんだのか。参加者のリアルな体験と感想の一部を、写真とともに紹介していきたい。
「ハロウィンだけじゃなく、友だちとテーマパークに出かけたり、“推し活”したりするときにもセカンドスキンメイク™を楽しみたい」と話したのは美容学校に通う学生。「好きなアイドルのライブを観に行くときに、推しのメンバーカラーを使ったメイクをしてみたい」と笑顔で語ってくれた。
頬にドライフラワーを装飾しようとする参加者も。研究員もこれほど大きなパーツを丸ごと肌につけるメイクは想定していなかったようで、「くっつくのかな?」とみんなが工程を見守った。結果は大成功。頬に花が咲き、拍手が湧いた。
2種類の花びらを組み合わせた、華やかなメイクを楽しむ姿も見られた。
美容学校に通う学生は、「従来のペイントメイクだと乾いたらひび割れて剥がれてしまうこともあるけれど、これは膜になっていてキレイに仕上がる。作品やショーで使えたら表現の幅が広がりそう」と、表現における「セカンドスキンメイク™」の可能性に期待を寄せた。
「艶っぽい質感や、マットな質感など、いくつかのテクスチャーが選べるともっといいな」と、より豊富なラインナップを望む声もあった。
初めてのメイク体験、親子でわくわく大変身
パパやママと一緒に、親子で参加するお客さまの姿も多く見られた。ウキウキと何度も鏡をのぞき込む子どもの姿が微笑ましい。このイベントが初めてのメイク体験になった子どもたちも多かったようだ。
ハロウィンの週末、家族でポイントメイクを楽しむのも、きっと楽しい思い出になるだろう。
また、兄弟で大胆なペイントメイクにチャレンジする姿もあった。
映画化されているアメコミのヒーローをイメージして、「目のまわりは白だよ」と妥協を許さないお子さん。そのリクエストに応えながら、絶妙なペイントメイクを施していくパパとママ。全顔メイクのため新たにメイク道具を持ち込みサポートする研究員の姿も見られた。
「ヒーローになりたい」子どもたちの夢を、「セカンドスキンメイク™」が叶える。そんなわくわくする未来も見えた時間だった。
イベントで得た手応えと今後の課題
最後のお客さまを見送ったあと、イベントを企画したメンバー3人に一日を振り返ってもらった。
「お客さまもスタッフも、みんなが楽しそうにしてくれていて胸が熱くなりました」と林田。
「セカンドスキンメイク™を使う過程を、お客さまが楽しめるかどうかが気になっていたんです。友だちと手伝い合いながら、メイクをつくり上げていく様子を見て、これは今までにないコミュニケーションが生まれるメイク体験になると感じました」
一方、今後の商品化に向けて課題も見えてきた。
「絵の得意な方は筆一本でどんどん描き進めていくのですが、みんながそうとは限りません。ラメやビーズなどのアイテムを貼り付けて、どんどん発想が広がっていく人もいましたね。ターゲットに合わせて、どんな基剤にすればいいのか。“わかりやすさ”も含めて検討していきたいです」
また、メイクキットの素材を準備した近藤は、「ビーズを組み合わせて、まるで耳にイヤリングをつけているようなメイクが印象に残りました」と話す。
「これまでのポイントメイクは、『色を楽しむ』ものでしたが、セカンドスキンメイク™は『透明を楽しむ』ものなのかもしれません。キラキラした素材や色のある素材を重ねられるのも、透明であることの強みですね」
セカンドスキン開発チームの貞神は、「想像していたよりも、みなさんが興味を持ってくれていました。研究員以外にもこの技術の面白さは確かに伝わるのだと、手ごたえを感じることができて、まずは安心しました」と明かす。
「これまでデザインやシーンから開発を考えてきましたが、実際の体験をふまえると、セカンドスキン技術®だからこそ生まれる体験をどう設計していくかの方が重要だと感じました。これから参加者のアンケート解析も進めますが、まだまだユーザビリティなどの課題もありそうです」
最後に「お客さまが楽しんでくれたからこそ、次はさらにクオリティを上げていきたいと思いました。イベントの達成感よりも、ここからがスタートです」と決意を新たにした。
イベント参加者は、初めてセカンドスキン技術®を知った人ばかりだった。それでも、メイクキットを前に、すぐに一人ひとりが基材をもとに自由にメイクを楽しみ、友だちや家族と語りあう時間が生まれていた。
参加者からは「最初に完成形を思い描けていなくても、メイクをしていたら、どんどんアイデアが湧いてきた」という声も寄せられた。
新たなテクノロジーによって、自己表現やコミュニケーションを創発する、クリエイティブなメイク体験が生まれている。
お客さまの笑顔やアイデアに触れ、研究員もあらためて前を向く。有意義な一日となった。
(text: Emi Kawasaki, photo: Yuko Kawashima, edit: Kaori Sasagawa)
Project
Co-creation with consumers
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