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0→1のβ版の市場投入を目指す、研究開発部門発のインキュベータプログラム開始

2019.11.21

2019年7月より始まった資生堂のオープンイノベーションプログラム「fibona(フィボナ)」。その活動のひとつが「スピード感のあるβ版の市場投入」です。クラウドファンディングなどのサービスを活用し、研究によって生まれたテクノロジーが活かされた製品を、β版として市場にスピーディに導入していくことを狙っています。

本活動第1弾として、アタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake」を運営する株式会社マクアケ(以下「Makuake」)と「fibona with incubators program(以下「インキュベータプログラム」)」を開始しました。(プレスリリース

インキュベータプログラムでは約半年をかけてワークショップを実施。資生堂の研究開発部門メンバーのアイディアを、製品化やビジネスモデルといった観点からブラッシュアップし、Makuakeへのクラウドファンディング掲載を目指します。

本稿公開の2019年11月時点で、インキュベータプログラムはちょうど折返し時点を迎え(製品化自体はもうちょっと先になります)、各自のアイディアはどんどんブラッシュアップされてきました。現在製品の輪郭が見えはじめているところです。そこでインキュベータプログラムに参加している3名の研究員に、現時点の手応えを聞いてみました。

左から、プログラム参加者の 資生堂グローバルイノベーションセンター 荒井 大輝、高橋 希佳、佐伯 百合子。

プログラムももうすぐ折返しを迎えるところですが、現時点のプログラムの印象を教えて下さい。


高橋:
今回のインキュベータプログラムは製品・サービスを立ち上げるという、いわば0→1のプログラムです。なかなか難しいプログラムだと実感しながらも、立ち上げた先にあるものを夢見ながら取り組んでいます。

荒井:
0→1といってもなんでも自由なわけではありません。これはあくまで資生堂のプログラムなので、社内に既にある知見を活かして、何か「イチ」を生み出さなければいけないという難しさはあります。

一方でその裏返しにはなりますが、今ある知見は何かしらの製品にもう使われているわけじゃないですか。そこから新しい価値を生み出せたら、それはそれでイノベーションになるわけです。同じ対象を既存の仕事をしている方とは違う視点から見るという経験は自身の成長のきっかけになって、プラスのポイントかなと感じています。

佐伯:
社内にある知見を活かすとはいっても、それなりの理由があって社外に出ていないという側面もあります。どうしたら魅力的な製品にアウトプットできて、かつ収益化につながるかを考えるのは難しいですね。とはいえ私は基礎研究に寄った部門に所属しているので、普段はビジネスの話はあまりしないんです。いつもは考えないような原価や利益の話などは、すごく面白いなと思ってプログラムに参加しています。

高橋:
本気で収益を考えるというのはやはり難しいですよね。Makuakeに出るならクラウドファンディングという特性上、準備運動なしでいきなりたくさんのお客さんがつきます。それで終わりならまだしも、企業としてやるからには永続的なビジネスにしないといけない。開発するだけではなくて、今後どうやってビジネスにしていくかを考えるというのはかなりハードルが高いというのが正直な印象で、やりがいのある取り組みですね。

ワークショップでは3~4人のチームごとに、ひとつのアイディアをブラッシュアップしています。アイディアはどういうふうに決めて、ブラッシュアップしていますか?


高橋:
僕のチームはみんなで初めに「そもそもこういうやつがやりたいよね」と話をしたら満場一致だったので、それを軸にアイディアをブラッシュアップしています。

佐伯:
うちのチームは軸となっている考え方自体は変わっていないのですが、機能や実現方法といったところは揺らぎながら少しずつ前進しています。

あとはうちだけ、女性だけのチームなんです。そのためアイディアがいっぱい出てくるんですよね。資生堂の商品ならメインターゲットは女性になることも多いと思うので、私たちが欲しいものを作るのがいいのかなと思って進めています。

チーム運営の難しさはありますか?


荒井:
スケジュールですね。プログラムはどんどん進んでいくので時間に追われているので、衝突して関係性が失われるのを恐れている場合じゃないというか。なので「なんかしっくりこない」という小さなぶつかり合いが普段の業務より起こっている気がします。でも衝突が起こってもそれは前に進むためなので、プラスの行動だと感じています。

高橋:
うちのチームでも何でも言い合う関係にしようと最初に合意しました。なので「ここはもうちょっとこうした方がいいんじゃない」みたいなのは、かなりの頻度で出てきています。でも仲はいいですよ。初めに飲み会に行ったのが効いて、楽しくワイワイしているチームになっています。

佐伯:
最初はやっぱり空気を読んで、他の人の意見も「いいと思う」みたいな感じだったんですけど、やっぱりそれじゃ本当に時間が足りなくて。思ってないことを言っている暇はないという感じになっていきました。アイディアはいっぱい出していくのですが、「私はいらない」「それは欲しくない」といってどんどん切っていく方が、むしろ効率的だし議論も前に進む。「いいよね」って横展開の考え方じゃないですか。でも事業は縦に進めていかなくちゃダメ。プログラムも半分を過ぎて、そういう環境になってきたかなとは思います。

インキュベータプログラムの先について、考えていることはありますか?

高橋:
今僕たちのチームが取り組んでいるアイディアは、マーケティングや調査結果を素直にみていると、なかなか難しい市場だという結論になってしまう。そのためどうやったら市場に受け入れられるかと頭をひねっているところです。難しさを乗り越えて、トータルとしてビューティにつながっていく事業にしていきたいと夢見ています。

荒井:
もちろん、まずは今あるアイディアを形にしていきたい。一方途中で出てきたアイディアを自分の業務に持ち帰って、深掘ってみたいなとも思っています。自分の部署でまた0→1をしていきたいですね。

佐伯:
私のように基礎研究をしているとよくあるのですが、入社してから自分が担当した研究が世に出たことがないという人が結構いるんです。せっかくモノを作る会社に入ったなら、「自分が携わったものはこれなんだ」と言って、家族や友達に言ってみたいじゃないですか。0→1っていうのは「基礎研究の成果が活かされた製品を作り出す」ということでもあって、それが私たちのエネルギー源になっています。なのでプロダクトという成果は絶対に出したいですね。

研究開発部門という普段ビジネス開発に関わらない部署が、0→1のプロダクトの立ち上げをしていく「fibona with incubators program」。その活動はまだ始まったばかりですが、着実に前に進んでいるとfibona事務局も感じています。このまま順調にいけばクラウドファンディングなどを通して、β版のプロダクトを市場に投入できる日が来るはず。資生堂グローバルイノベーションセンター発の0→1プロダクトの登場までもうちょっとお待ち下さい。

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