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1年で開発するの!? 顔色めざめるフィルム型サプリ「Lämmin」開発秘話|企画メンバーの挑戦

2020.12.15

2019年7月より始まった資生堂のオープンイノベーションプログラム「fibona(フィボナ)」。その活動のひとつが「Speedy Trial」です。展示会やクラウドファンディングなどのサービスを活用し、研究によって生まれたテクノロジーが活かされたプロダクトを、β版として市場にスピーディに導入することで、熱狂的なプロダクトのファンの方々と出会い、コミュニケーションを行うことで、開発の初期段階から「価値」を起点に研究開発を進めていくことを目指しています。

2020年12月には、fibona初のクラウドファンディングに挑戦するプロダクトとして「Lämmin(ランミン)」がリリース。Lämminは顔印象に着目したフィルム型サプリで、大事な場面の10分前に摂取するだけで、顔印象がパッと明るくなります。

今回の記事ではLämminを開発した資生堂グローバルイノベーションセンターのメンバーに、Lämmin開発の裏側について語ってもらいました。

左から旭啓之、佐伯百合子、岡村智恵子、三好真未

たった1年で製品をリリースするスピード感


──メンバーの皆さんはfibonaのインキュベータプログラムに、挙手制で参加したと伺っています。理由を教えて下さい。

佐伯:
私は入社以来ずっと基礎研究をする部門にいることもあって、「自分の関わった製品が世に出る」という経験がまだないんです。せっかくものづくりの会社に入ったのに、自分が作ったものが世に出ないことにフラストレーションがあったんですね。fibonaなら製品の企画からローンチまで関われるということで、興味を持ったんです。

岡村:
私は会社に入って20年近く、医薬品や新領域開発を中心に基礎から製品まで色々な業務に携わってきました。このプログラムが周知されたときは、長年深く携わってきたテーマで自身に行き詰まり感を感じていた時で、これまでとは違うことに挑戦して自分の壁を壊したいと思い、手を挙げました。

三好:
私はフロンティアサイエンス部門に所属しています。ここでは医療分野を扱うので、佐伯さんと同様化粧品会社らしいものを作った経験がないんです。ものづくりをしている部署の同僚と買い物をしているときに「これ私が作ったんだ」と化粧品を紹介してもらうことがあるんですね。そういうのが羨ましかったので、自分でもものづくりに関わってみたいなと。

また部門での業務として、最近事業化に向けた計画を立てる仕事にも携わっているのですが、ものづくりをしてこなかったので、まだ「事業」の肌感がないんです。fibonaのプログラムでは売上やコスト構造等の「事業プラン」も自分たちで作っていくということで、自分の業務にも活かせるんじゃないかと考えました。

──旭さんはfibonaの運営メンバーとして、Lämminをサポートしていました。Lämminがクラウドファンディングにリリースされるまでの経緯を教えて下さい。

旭:
このチームは、当初全然違うアイディアを考えていたんです。最初はデバイスにこだわって、香りが出るネックウォーマー等を考えていたのですが、オリジナリティの問題だったり、そもそもデバイスではなくて課題解決にフォーカスすべきだという話になったりして、プログラムの後半で突然アイディアが白紙に戻ったんです。

じゃあどうしようかと、私も一緒になってメンバーでディスカッションしていた時に「フィルム状のサプリメント」というアイディアが出てきました。個人的にもピンときましたし、メンバーも頭の上にピコンと電球がついたような感じでした。それが2019年の年末。一気に形を作っていった2020年は怒涛の1年になりましたね(笑)。

岡村:
2020年の2月に今年中にローンチする計画で推進すると知って、みんなで驚いたのを覚えています。「今年もう2か月終わってますけれど!?」って。

通常のサプリなどの開発期間に比べたら、驚くべきスピード感で、みんなが唖然としていました(笑)。

処方開発からプロモーションまでを一貫して担当


──チームで「フィルム状のサプリ」を作ろうとなって、社内ではどんな反応でしたか?

佐伯:
まず部門長へのプレゼンにサンプルをもっていきました。サンプルと言っても、自分たちで作った、原料を溶かし込んだ薄型の砂糖アメみたいなものです。今考えればかなりレベルの低いサンプルですが、「フィルムっていう形状、面白いね」「味がこれだったらいけそう」というコメントをいただいたのを覚えています。

旭:
「メイク直しするのと、これを食べるのはどう違うの」という質問がありましたね。メイク直しは時間がかかりますし、夕方の顔色がくすんだり、悪くなってきたところに朝と同じファンデーションではキレイにならない、という課題をお話して、今までとは違うソリューションであることを認識してもらいました。

岡村:
その後にちゃんとしたサンプルの形が見えてきて、魚谷社長を含めた役員プレゼンに臨みました。どうなるかと思ったのですが、ある役員が「すごく面白いと思う」と言い切ってくれたんです。「実際にやってみて、お客さまがどうコメントするのか興味があるし、チャレンジはすごく良いと思う」とポジティブな空気を作ってくださった。感謝しています。

──1年もかからずの開発は、資生堂としてもなかなか経験のないスケジュールだったのではないでしょうか。

岡村:
開発の最初の3ヶ月は大変でした…。最初の難関は、私たちが選んだ顔印象をサポートする成分を必要な量含むことができ、かつ口の中でサッと溶ける剤型を探すこと。資生堂とお取引のある既存のサプライヤーさまでは対応できないので、何十社か直接交渉をしました。しかもこの時期からコロナ禍で、出社もできなくなったんです。だからサプライヤーさま候補とはずっとメールや電話、郵便のやりとりでした。

納期や量産体制、サンプル品の味や溶け方等少しずつ条件を絞っていったら、最後に1社フィルムの会社さまが奇跡的に残ったんです。新しくお取引をはじめる会社さまにお声掛けすることもみんな初めての経験だったので、生産の道筋が見えたときにはホッとしました。

先日工場の視察に行ってきて、工場のラインから私たちのフィルムが出てきた瞬間には「うちの子!」とか言っちゃいましたね(笑)。

三好:
生産に目処がついて、物流・商流・コスト計算等は私がメインで担当しました。苦労したのは値段ですね。クラウドファンディングに先立って価格の検討もしたのですが、そんな経験一からしたことがなくてどうしたらいいかわからないので、社内で食品を扱っている部署に問い合わせたりしながら色々考えました。枚数によっても価格は変わるし、どういう枚数と値段だったら買ってもらえるだろうかというのを、ずっとみんなで議論して。こういうことをしたくてfibonaに手を挙げたので、貴重な経験になりました。

佐伯:
Makuakeのクラウドファンディング用のページを作ったり、プロモーションをしたりするのは私の担当ですが、今までやり取りしたことのない部署の方々と一緒にお仕事をすることが多かったです。

例えばクリエイティブ本部という、資生堂のデザイナーやコピーライターがいる部署の方々と仕事したのも初めてでした。ウェブページの構成や、どういう言葉でお客さまに物事を伝えていくかといったことをやりとりしていたのですが、プロの意見を聞きつつ、企画メンバーでひとつひとつ議論し、判断をしていくという作業はかなり難しかったです。でも、パッケージのデザインやコピーライティングは、普段の仕事でデータを解析するのとは全く違う頭を使っているなという感じがして、とても楽しかったです。

──どこかで揉めたりもしましたか?

佐伯:
ずっと揉めていますし、まだ揉めています(笑)。Makuakeのページ向けに、Lämminのユニークさや新しさと、どういう時に使って欲しい、みたいなことを盛り込みたいんですが、資生堂らしさとMakuakeらしさのバランスは難しいですね。資生堂らしさを前面に出していけば資生堂のファンの人は買ってくれるかもしれないですけれど、Makuakeにいる最先端を追っている方々にそれが受けるかというと、そうとも限らないかなと思います。クリエイティブ本部の方々とMakuakeを研究して、議論しながら一緒に進めてきました。

──他の部門の方々は協力的だったんですか?

旭:
今回の取り組みに関しては、ポジティブに捉えてくれる部門の方々が非常に多かったです。
総じて「こういうチャレンジ良いよね」という感じで。短い開発期間であっても良い製品をお客さまに届けたいですし、品質や法律に関わる部分はおろそかにできない。社内の専門家が味方になってくれたのはありがたかったです。

購入した後も続く、Lämminとの関係


──1年かけてプロダクトが世に出ていく段階に入りましたが、最初プロダクトを手にとった時は、どんな感想でしたか?

佐伯:
ちょっと感動しました。本当にものになったんだって。化粧品でも中味の状態だけなら研究所のビーカーや冷蔵庫でよく見るのですが、ちゃんとパッケージができると、どうやって配送してどのように宣伝するかという意識になっていくんですよね。「本当に売りものになるんだな」という実感が湧いてきました。

三好:
パッケージは「かわいいね」とか「インスタ映えしそう」と言われます。食べてもらうと結構パンチのある味なのも意外みたいです。

岡村:
私は会社にそれなりの期間いるので、資生堂という会社がどのぐらいのスパンで何を開発するか、なんとなくわかっているんです。なので「今年中にローンチする」と言われたとき、「いやムリでしょう!」と思っている自分がどこかにいました。でも他部門やお取引先さまなど皆さんが理解し協力してくださって「どうすればMakuakeにチャレンジできるか」を一緒に考えてくださり、そして自分達も頑張って。意志や覚悟の大事さをひしひしと感じています。

三好:
本当にここまでできたのには感動しましたし、時間が早く過ぎて、1年がすぐに終わりました。原料を探すにあたって、皆で甘いものから苦いものまで、様々な食材を実際に食べて検討した思い出も詰まっていて、これからLämminを見るたびに思い出しそうです。

──このクラウドファンディングは、お金を集めるのではなく潜在顧客とコミュニケーションをすることが主目的かと思います。クラウドファンディングの後はどういった予定なのでしょうか。

岡村:
まだ詳しいことは決まっていないのですが、アンケートを取ったりヒアリングをしたりと、購入者の意見を聞いて共創していく予定です。

佐伯:
Makuakeのページにも記載していますが、応援購入して頂いた方には製品のブラッシュアップに是非ご協力いただきたいと考えています。

購入していただいた方は、Lämminに何かしらの魅力を感じたから購入して下さったはず。その方々が買ってがっかりしたのか、大満足だったのかは、やはり知りたい。どこがダメでどこが良かったのか。我々が推しているのとは違うポイントが出てくるかもしれません。そういうところを拾いながら、Lämminを改善していきたいです。

──最後にLämminの購入を検討している方にメッセージをお願いします。

佐伯:
Lämminはフィンランド語で「温かい」という意味です。「毎日がんばるあなたを、いつも近くで温かく見守る存在でありたい」という想いを込めて名付けました。明るい顔で、気持ちが前向きになる。その先に自信が生まれ、表情が輝き、コミュニケーションもうまくいくようになる。そんなことを目指してLämminの開発に取り組んできました。テレワークでのビデオ会議や、特別な外出の時などにぜひ使っていただきたいですね。

資生堂fibonaプロジェクトから生まれたLämmin。2021年03月14日までMakuakeでクラウドファンディングをしていますので、是非応援購入をお願いします。またチームメンバーが語っていたように、Lämminは購入いただいた後の、フィードバックもお願いする予定です。一緒にLämminを作っていく過程を、楽しんで下さい。

(text: pilot boat 納富 隼平)

Project

Speedy trial

クラウドファンディングサービスの活用やβ版ローンチプラットフォームなどへの積極的な出展を行い、研究によって生まれたテクノロジーのβ版をスピード感を持って市場に導入 します。

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