FEATURE: S/PARK Museum

「美」によるひらめきを体験しに

多様な知と人との融合によって、これまでにない価値を生み出すことを目的として誕生したS/PARK。その2階部分を占めるのは、資生堂のイノベーションや歴史を感じ取ることができるS/PARK Museum(エスパーク・ミュージアム)だ。

「ただ展示を見て回るだけではなく、インタラクティブな体験を通して“感じてもらう”仕組みを大切にしました。そこから生まれる疑問やひらめきを持ち帰って欲しいと思っています」。そう話すのは、企画当初から関わる社会価値創造本部の石田絵里さん。「小・中学生くらいの化粧品が身近ではない来館者も、自由に回遊しながらでも楽しんでいただけるような擬似実験や展示を、研究員と一緒に企画しました。もちろん、大人の方にも十分楽しんでいただける内容になっていますよ」

S/PARK Museumの5つに分かれた各ゾーンでは、それぞれのテーマに沿った展示や体験が用意されており、メインとなるのがミュージアム入り口に位置する「サイエンス&アートゾーン」だ。ここでは、1897年に発売された資生堂ビューティーのルーツである商品「オイデルミン」をサンプルとして、化粧品をつくるサイエンスとアートを体験的に感じることができる。また、「洗顔」「スキンケア」「サンケア」「ファンデーション」「メーキャップ」「香り」というテーマに分かれた6つの平台では、一般的な理科の原理原則にはじまり、それらが化粧品にどう応用されているのかなどが紹介されている。

\「例えばファンデーションの平台では、毛穴の隠し方について解説しているのですが、実は毛穴は全部埋めてしまうと逆に目立ってしまうということが説明されています。全部塗られた丸と、少しだけ塗られた丸、そして全く塗られていない3種類の丸が描かれた絵を見比べられるようになっているんですが、部分的に塗られている丸が描かれているものが、一番なめらかで自然に見えるんですよ」と石田さん。「人の見え方には光の反射が大きく影響していて、ミクロの世界で光を操ることでファンデーションは進化していることを紹介しています」

資生堂の文化発信やライフクオリティー事業などを通じて「美しく生きるためには?」ということについて考えるきっかけをもたらす「ライフ・オブ・ビューティーゾーン」では、美しい食文化を追求してきた資生堂パーラーの歴史について、また、1937年創刊の資生堂の企業文化誌『花椿』のバックナンバーなどが時代の流れを感じさせてくれる。そんなゾーンの冒頭に設置されたコーナーでは、自分が時空を旅する動画の主人公になり、各時代に流行したヘアやファッションをバーチャルに体験することができて楽しい。

他にも、資生堂の最新の知見や開発中の製品プロトタイプ、直近の研究事例などを紹介する「イノベーションズ・イン・ビューティーゾーン」、ワークショップやイベント、実験的な展示などが今後行われていく「フューチャーゾーン」、そしてここでしか手に入らないS/PARKオリジナルグッズが購入できる「ミュージアムショップ」と盛りだくさんだ。

S/PARK Museumを回っていると、随所に「美の問い」が書かれた吹き出しマークが設置されていることに気付く。「訪れたお客さまに立ち止まって考えていただきたいと思い、さまざまな設問をミュージアム内に散りばめました」という石田さん。訪れた人が、毎日の生活を豊かに彩る美しさについて考える場となることを願う。「資生堂が化粧品という領域に留まらず、生活や文化などの幅広い領域における『美』を考える会社である、ということを感じていただきたいと思っています」