FEATURE: S/PARK Museum

サイエンステーブル⑤「ファンデーション」

「Science × Art」、「Life of Beauty」、「Innovations in Beauty」、そして「Future」の4つのゾーンで構成されるS/PARK Museum。ただ見て回るだけでなく、各ゾーンではミュージアム全体のテーマである「美」にまつわるさまざまな問いを投げかけられ、理科の実験のようなインタラクティブな体験ができる場所となっている。今回はなかでも一番の見所である「Science × Art」ゾーンに設置された、6つのサイエンステーブルから「ファンデーション」のテーブルについてご紹介。

肌がきれいに見える仕組みや、ツヤ肌とマット肌の違いなど、素朴な疑問に答えてくれる「ファンデーション」テーブル。この企画・設計を担当したのが、「インテグレート 水ジェリーファンデ」などのヒット商品を生み出した、資生堂グローバルイノベーションセンターのブルースカイイノベーショングループに在籍する久保田俊さんだ。

「ファンデーションがどういうものなのか、意外とご存知ない人が多いと思います。ここではその仕組みについて、理科の要素を取り入れつつ、わかりやすくご紹介しています」と久保田さん。

こちらのオレンジが並んだ展示では、毛穴に対するファンデーションのアプローチ方法と、それによって肌の見え方がどう変化するかを視覚的にとらえることができる。左から「素肌」「毛穴がすべて粉で埋まった肌」「毛穴の入り口だけが粉で覆われた肌」と3種類の肌パネルが並んでおり、それぞれをルーペで見比べられるようになっている。

「今まで、毛穴を粉で埋めればいいと思われていました。でもそれだと、逆に毛穴が白く目立ってしまう。毛穴の周りだけに粉がつくようにすると、目立たなくなるということがわかりました。毛穴が目立たないので、肌がきれいに見える。目の錯覚を利用しているのです。トリックアートから着想を得ました」とにこやかに話す久保田さん。一見化粧品とは関係がないような発想を取り入れることにより、化粧品の新しい技術や開発するのは久保田さんの得意分野だ。この粉の技術は、「マキアージュ ドラマティックパウダリーUV」に使用されている。

続いて案内してくれたのは、レフ板を使った実験コーナー。「石膏像にレフ板を当ててみてください」と久保田さん。カメラマンがポートレートを撮る時などに使用するレフ板は、光を被写体に反射させ、写りをよくするためのもの。石膏像にレフ板を当てると、光の当たる角度によって表面の見え方が変わり、表面のシワや凹凸が消えるのがわかる。その仕組みを応用し、粉自体がレフ板の役割を果たすファンデーションも誕生した。

「新しい領域を作るのが得意」と話す久保田さん。現在は、ファンデーションにこだわらず、「ビューティー」というキーワードを軸に、さまざまなアプローチで問題を解決していくチームに所属している。「それぞれ肌質や顔の作りが違うので、いろんな悩みがあって当然。マイノリティだと思われるような悩みでも、私にしかできない新しい切り口で解決できたらいいですね」と今後の抱負を語ってくれた。

この他、資生堂のファンデーションの歴史や、粉の形や細かさなど、さまざまな側面からファンデーションについて紹介している。普段何気なく使用しているファンデーション。その秘密が少しでもわかると、毎日のメイクが楽しくなるかもしれない。