FEATURE: S/PARK

S/PARK オリジナル商品ができるまで 〜開発チームの座談会〜

資生堂の研究開発の拠点として、お客さまと研究員の交流や外部機関との取り組みを積極的に行ってきたS/PARKから、企画から開発、製造、販売までをS/PARK内で完結させた完全オリジナルの商品が登場。第一弾となるフレグランス「S/PARK フレグランス ベイサイド カメリア 〈オード パルファン〉」を皮切りに、今後もさまざまな挑戦を続けていく予定だ。今回は企画から香料開発、商品化まで携わる研究員の松浦、越後、庄司、森下、荻野、幸島の6名に、この新たなプロジェクトへの想いや、開発におけるこだわりなどを座談会形式で語ってもらった。

左から開発チームの松浦、越後

— まずは、今回S/PARKオリジナル商品を作ることになったきっかけを教えてください。

松浦:わたしは長年スキンケア化粧品の開発研究を行ってきましたが、みなとみらいに研究所が移ってきた2019年から「これだけの環境と研究員が揃っているのに、なぜ化粧品が店頭販売されていないのだろう」と不思議に思っていました。昨年、S/PARKの運営に関わる業務を担当するグループに異動し、ここでなら店頭販売に挑戦、実現できるのではないか、と改めて思えたことがきっかけです。お客さま目線で考えても、せっかくS/PARKにいらっしゃった時に記念にお持ち帰りいただける化粧品があったらいいなと思い、このプロジェクトを立ち上げることになりました。

越後:また、S/PARK自体にお客さまと研究員が融合できる施設にしていくというコンセプトがオープン当初からあるのですが、なかなか明確な形にできていないという課題も感じていました。

— フレグランス商品からスタートされたのはなぜでしょうか?

庄司:実は我々香料開発チームも、S/PARKオープン時からオリジナルのフレグランスを作りたいと思っていたんです。でもなかなか商品化まで進めることが難しくて、そんななかこのプロジェクトの動きを聞き、ぜひ一緒にやりたいと相談させてもらいました。

松浦:1階にある工場(ビューティーバーラボ)を活用させるという観点でも、生産するものによって設備や備品などが変わるのですが、フレグランスの製造であれば取り組みやすいのではと思ったことも大きいですね。また、フレグランスはたくさんのお客さまに手に取っていただきやすい化粧品ですよね。

— 念願のプロジェクトということですが、具体的にどのように進めていかれたのですか?

松浦:まずは、お客さまに届けたい香りを香料チームでじっくり考えてもらうところから始まりました。香りの選定やパッケージ、コンセプトづくりなどはクリエイティブ部門の力も借りながら、S/PARK内のさまざまなチームと連携して進めてきたので、それぞれのチームが普段携わることのない分野の業務まで知ることになりました。

幸島:そうですね。普段のフローでは、マーケティングの方でブランドのコンセプトやターゲットを決めて、そのテーマに合わせて香りの方向性を提案していくのですが、今回はターゲットの設定から、世界観作りまで私たちが主体となって携わらせていただいたので本当にチャレンジングだったなと思います。でも、それができるというのもS/PARKの強みだなと改めて感じました。

荻野:普段から様々な部署と議論を交わしながら香りや処方を開発していますが、どうしても自分の専門分野である香り開発の部分に注力することが多くなりがちです。しかし、今回は全員ですべての工程を担当したので、香りだけでなく、パッケージや売り方に関しても深く関わることができ、とても勉強になりつつも、やっぱり難しいし、大変なことなんだなと体感できました。

左から香料開発チーム庄司、荻野、幸島、森下

— 「ベイサイド カメリア」の香りのコンセプトを教えてください。

幸島:資生堂の長年培ってきた香りのDNAである高級感とナチュラルさのあるシングルフローラルと、トレンドを融合させた香りを目指しました。性別や年齢に関係なく、毎日いろんなシーンで使って欲しいという想いがあったので、多くの人に愛される軽やかで清潔感のある香りというのは大切にしています。

森下:資生堂のDNAというのは、一番最初の香水である「花椿」が誕生した大正時代にまでさかのぼります。当時は椿、そしてその後も梅や菊といった花の香りを基調とした香りを作り続けている背景には、日本人の女性が単体の花の香りに惹かれるという嗜好があったのではないかと思っています。そのDNAをいま一度踏襲し、私たちも香りを人々に問うてみたいと思い仕上げました。

— 最終的な香りの決定までには、どのようなプロセスがあったのでしょうか?

越後:「ミライスト」というS/PARKが行っている取り組みを通して、お客さまの好みをリサーチしたり、ビューティーバー コンサルタントや香料開発以外のメンバーの意見も参考にして改良を重ねました。

森下:今回はS/PARK オリジナル化粧品の第一弾ということもあり、香りが尖りすぎてたくさんのお客さまに好まれないのは残念だし、尖らなさすぎて面白みに欠けるのも嫌だったので、ジレンマも多くありましたね。

— さまざまなお客さまからのフィードバックで感じたことなどはありましたか?

幸島:「S/PARKから発売する新製品」をテーマにミライストさんと行ったワークショップにて、お客さまから香りに関してはイメージに近いと言っていただけたのですが、当初提示したコンセプトが分かりにくいとか、古めかしいといった声もいただきました。香りは目に見えないからこそ、どんなストーリーでお伝えするか、どうやってお伝えするかということが大切なのだと改めて気付かされました。

庄司:慣れないことに戸惑う場面もありましたが、最終的にはS/PARKらしい特徴もありながら、多くの方に喜んでいただける商品へと着地できたと思っているので、改めてお客さまの反応をお聞きするのが楽しみです。

S/PARK内で企画~開発~製造~販売まで、研究員が一貫して行う様子

— 1階の工場ではどういった作業が行われているのですか?

越後:中味の製造から充填、パッケージのレーベル貼りまで全て手作業で行っています。お客さまからも製造風景をご覧いただけるように、工場内にベルトコンベアなど大型の装置はないので、数名で連携して効率的に作業を進めています。

松浦:通常であれば、ブランドのマーケティング部門が商品企画をし、研究所で処方を決めたら、生産は工場部門が責任をもって行うというのが開発の流れです。ここではそのすべてをS/PARK研究員で行っているので、企画から香り・外装チームも参加しますし、生産、販売までも関わります。今までやったことのないことをやっているというのは、無駄に感じてしまうかもしれないけれど、わたしはモノが作られていく過程の全てを知ることは貴重だと思っており、人脈も広がって、他の人の仕事を知ることで自分の仕事に活きるものがあると感じました。

— スタイリッシュな容器のデザインも素敵ですね。

荻野:年代や性別を問わず、誰もが手に取りやすいデザインというところを判断基準として選びました。ただ、四角いボトルはレーベルを貼るときに中心を揃えるのが難しいということを、実際に作業をしてみて感じましたね(笑)。

— 出来上がった商品の感想や今後の展望を教えてください。

森下:第一弾ということで、多くの方に手に取ってもらいやすい商品ができたなと感じています。S/PARKに訪れるお客さまがこの香りをまとって、みなとみらいで楽しく過ごしてもらえたら嬉しいです。

庄司:構想期間が長かったので、多くの方の協力や苦労のすえにようやく形になったことで感慨深さはありますが、これで終わりというわけではなく、お客さまのお手元に届いて、どういった反応をしていただけるのかというところが一つのゴールなのかなと考えています。

越後:わたしもこの商品はゴールではなく、始まりだと思っています。実際にこの商品をどのようにお客さまにアピールしていくのか、販売していくのかなどをこれからも考え続け、第二弾、第三弾と続けていくなかでお客さまのお声を取り入れながら進化していけたらと思っています。

松浦:ほかにも世に出してみたい商品がたくさんあるので、このフレグランスを始まりとして、ゆくゆくは研究員たちがもっと気軽に商品を作って、販売に携わり、お客さまとコミュニケーションをとることのできる場を作っていきたいです。

S/PARK フレグランス ベイサイド カメリア〈オード パルファン〉 30ml 税込価格3,300円
https://spark.shiseido.co.jp/topics/4269/